タイガーマスク基金 インタビュー

タイガーマスク基金 インタビュー#7
施設にいたことを否定的に思わないで欲しい

自分ができることを模索中

20~30代の頃は、自分が収入を得て税金を納めれば、それが社会への恩返しになると思っていましたが、40歳を過ぎてから、「自分ができることはなんだろう」と思うようになりました。

 

「施設にいた経験があったからこそ、今の自分がある」と思えるようになりました。感謝の言葉を伝えたくて、健康の里に連絡しました。当時の職員はすべて変わってしまっていましたが、施設長さんと会うことができ、5時間も話しました。施設長さんは、「先輩のこういう話が大事なんだ」とおっしゃってくださり、その後、施設の子どもたちに話す機会をいただきました。

 

助けてもらった才村先生に、手紙を出したら覚えてくださっていました。お返事をくださり、その後も2回お会いして、感謝の気持ちを伝えました。そのときに、施設出身者で、茨城県高萩市長 草間吉夫さんのお話が出たので、ネットで調べていたところ、タイガーマスク基金にたどり着いたというところです。

 

今は、自分になにができるのかを模索しているところです。
私の場合は、虐待の環境から、児童養護施設に入ることで、住むところと食事、睡眠が確保され、生活が安定しました。虐待を受けている子どもたちは、この最低限の部分が保証されていませんから、まず、自分がステップアップするために、施設に入るという選択をさせてあげるべきと、思います。
そして、施設にいる子どもたちに、また虐待を受けている子どもたちに、どんなサポートができるのだろうと、考えているところです。自分の経験が役に立つのなら、施設の子どもたちや、施設の先生にどんどん伝えていきたいと思っています。

 

 

「施設にいる子どもたちへのメッセージ」

私が伝えられるのは、施設にいることを否定的に思わないということかな。どんなにつらい経験をしていたとしても、過去の境遇にとらわれすぎないことですね。
「今をがんばって生きる」という気持ちに、切り替えていきましょう。私自身も子どもの頃は、いろいろなことにとらわれたり、反抗していたけれど、気持ちを切り替えると、自由になれる。早く気づいてほしいと思います。

 

そのためにはまず、広く世間を知ることです。狭い空間しか知らないと、狭い空間でいやな思いをするものです。広い空間、長い時間を知ること、過ごすことで、分母が大きくなり、子どもの頃につらかった思いが小さくなるかもしれません。つらかった記憶を小さくする手段は、いろいろあると思います。まずは、自分の心が自由になるために、なぜ、こういう状態になっているのか、そしてどうすればより良い生活になるのか、具体的に考え抜くことが大切と思います。

 

そしていいことも悪いことも嫌なことも経験をして、人としての幅を増やしていく。そんな経験を積んでいけば、人としての厚みがでてきて、その厚みが重なった高さから再び広い視野で物事を見て経験を積んでいくことができます。それを繰り返すことで、辛い記憶に偏らない、とらわれない、こだわらなくなります。広く自由な考え方でいろんな問題を乗り越えてたくましくなること。施設出身だからといって、お金が無かったとしても、挫けても、それを乗り越えていく、デンと構えた考え方と心の持ちようを身につけてほしいです。

 

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