タイガーマスク基金 インタビュー

タイガーマスク基金 インタビュー#3
児童養護施設を出る子どもたちにサポートを

政治家になるために松下政経塾に

児童養護施設について正しく認識をしている人がとても少ないように思います。親がいない子どもを保護する孤児院とか、非行を行った子どもを矯正するかつての教護院のようなイメージを持っている方も少なくありません。
 

このように間違った認識をもたれているために、結婚するときにも児童養護施設出身というだけで、親や親戚から反対されるなど、ハンデになることもあります。
 

何とか、そんな現状を変えたい、そのためには政治家になって法律を変えればいいと思うようになりました。政治家になろうにも、地盤も看板も鞄もありませんから、まずは松下政経塾に入りました。倍率は70倍だったそうです。勉強はできませんでしたから、面接の時の愛嬌と志で受かったのではないかと思っています。
 

松下幸之助の存在も、施設長から教えてもらいました。バブル期には、日本の企業人のモラルが問われましたが、施設長は「松下幸之助は、ちょっと違うよ」と言っていました。松下幸之助のマンガを読んで、実際、すごい人だと思いました。学歴もなく、家族もなく、体も弱く、いろいろなハンデがある中、それを生まれた環境や生い立ちのせいにしない。心の持ち方一つで活路が開けることを教えられました。自分は、どう自分の人生に対峙するのか。自分の人生を呪うのではなく、前向きになろうと思えるようになりました。

 

松下政経塾にいるときに、世界40カ国を回りました。世界を見たからこそ、「世界の前にまず日本だ」という気持ちが強くなり、その後、高萩市長に立候補し、現在に至ります。

 

 

親になって無償の愛を知った

現在、私は3児の父親です。自分自身、子どもを持ってよかったと思います。今までたくさんの人から愛情を受けてきましたが、子どもから初めて「無償の愛」を教えられました。無条件で何かしてあげるということ、これは彼女とつきあうのとは少し違うものでした。

 
子育てを経験してよかったと思います。子育てを通して、人を受けいれられるようになった気がします。子どもは思い通りになりませんから、たとえば10時に外出しようと思っても、おねしょしちゃってその片づけをしたりして、予定通り出られないなんていうことはたくさんありますから。都合通りにいかない彼らに合わせていくという術を学びました。

 

人としての情感、ぬくもりやあったかさも、子どもを持つことで開花したように思います。それまでは、もっとギスギスしていたように思います。「9時半に帰るよ」と言っていたのに、10時になってしまって。それでも、帰りを待っていてくれる子どもたちの存在がうれしいですね。子どもの寝床で本を読んであげたりします。川の字になって眠るという、日本人の特性はとてもステキなことだと思います。

 

 

子ども虐待に対して思うこと

ぬくもりを感じながら、愛されて育たないと、人を愛することが難しいですね。でも、私は今、他者を愛すことができています。受信器と発信器の関係だと思います。子ども時代はたくさん思いをかけてもらったり関心を払われるという受信器、大人になったら愛情の発信器に変わるのだと思います。それは血がつながっていない関係でもあり得ると思います。
 

愛情は親や地域、いろいろなところから注がれます。でも最近は、一人の子どもに注がれる愛情の総量が減っているような気がしてなりません。親として、子どもにいっぱいの愛情を注ぐことができない、地域から注がれる愛情も少ない……。その裏には虐待が起こりやすい社会的な要因が隠れているように思います。

 
私は、子ども虐待は、チャイルド アビューズ(child abuse)「児童虐待」とは言いたくないと思っています。チャイルド マルトリートメント(child maltreatment)「不適切な扱い」という表現にした方がいいと思っています。

 
親子が向き合える支援「ペアレンティングサービス」が必要だと思っています。そのためには、国や社会は支出を惜しまず、社会で意識を育み高めていかなくてはなりません。チャイルドファースト「子どもを中心に」という考え方が、今こそ必要です。

 

今は親も仕事で忙しく、子どもも塾や習い事で忙しい。近所から干渉されたくないし、近所の人も干渉しない……。そんな中で、子育てがどんどん孤立化しています。夏はキャンプに行ったり、秋はハイキング、イベントなど、親子が何もかも忘れて過ごせるような地域の人とのつながりがあるといいですね。三世代が交流できるようなお祭りなど、日本の文化や絆の再生のためにも必要だと思います。

 

 

タイガーマスク基金を応援します!

タイガーマスク基金の発想はとてもいいと思います。基金を作っていただいて、ありがたいです。成長していく子どもの可能性を広げますね。

 
そして本当に必要なのは、施設出身の子どもの心を強化するメンタル的な支援だと思っています。子どもたちが、ありのままの自分を受け入れられるようになることが大切です。

 

自分は施設長との出会いがあったからこそ、自分の人生を受け止められるようになりました。自分のままでいいと思えること、自尊心を高めてあげることが必要です。

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